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「ダ・ヴィンチ」97年4月号の「今月のえこひいき」欄に掲載された文章の原稿です。(この雑誌は投稿が採用されると担当の方から電話がかかってくる。素人はあたふたして、気の利いたことは言えなくなってしまうのだ)
眉村卓といえば、かつての名作『ねらわれた学園』『時空の旅人』(いずれも角川文庫/品切)などのジュニア物やショートショートの作家だと思っていた。
ところが久しぶりに『引き潮のとき1〜5』(早川書房2500-3300円)を手にとって、本格SFの領域の人だったのだ、ということを遅ればせながら知った。
この作品の舞台は未来、人類が宇宙へ植民していった時代。主人公は、ロボットを多数使って一つの惑星を仕切る「司政官」と呼ばれる公務員である。タイトルが示す通り、もはや時代遅れとなりかけた職業だが、極秘指令を受けて一生懸命取り組む彼。少々独りツッコミ癖があり、挑戦されると後に引けないタイプのなかなか魅力的な男だ。彼の運命が気になって(女友達との仲はどうなるんだ、とか)普段は敬遠気味の長編もすいすい読み進んでいった。そして期待の最終巻……え?
ところがどっこい、な終わり方だったのである。詳しくは書けないが、「物語は整理され終わる」と思っていた私にとって、これは目から鱗だった。『銀河英雄伝説』で「いい人さえも死ぬ」ということを知って以来の衝撃である。理屈では分かっても感情は納得が行かない。活字中毒なのに一週間ほど他の本が読めなくなった。
しばらくして傷も癒えた(?)今、怒濤のように他の作品にも取り組んでいる。やっぱり基調となるのは「真面目で一生懸命なサラリーマンの哀しみ」。シビアでしんどいが、こりずに眉村卓全作品制覇を企んでしまったのはなぜだろう。あこがれていた仕事もこんなもの、と現実を見た就職2年目の心に逆説的な励ましに聞こえたからだろうか。
……もうちょっと、がんばってみよう。彼らもいるのだから。