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[は行] ペンフレンド / 井上ひさし
2005-03-04
遅筆で有名な劇作家にして日本SF大賞受賞作家でもある井上ひさしの書簡体連作集から1編を。全編が書簡からなる凝りまくった構成です。
北海道に旅行を考えているOLの幸子。案内役を旅行雑誌で募集して文通を開始するのだけど、応募してきた相手は……
現在でも出会い系サイトなんかでありそうな話だ(^_^;)と思って再読していたのだけど、よく考えると手紙でないと成立しないか。(私はよく古い小説を読むとき、今だったらこれメールでできるな、とか考えたりします)昔はよく雑誌でペンフレンドを募集してましたね。ああいうページを見るのが好きだった。SFでも眉村卓の「まぼろしのペンフレンド」とか。
ミステリファン向けには「鍵」(芸術家の家で起こった殺人事件の謎)や「里親」(乱歩賞やアンドリュー・ガーヴ*1の話が出てくる)あたりもオススメ。そして最後の1話でさらなる謎解きが。
この作品集のすごいところは手紙やその他の文書という文字でしか成立しないようになっているところ。登場人物がどんな状況でも文章を書いている。内容も全て違う趣向で、ミステリあり人情話あり、人生の苦さあり。いや、まあ現実にこんな長い、しかも会話文が入った手紙書く奴いないよ、というツッコミはなしでひとつ。
時代の空気なんだろうけれど、どの人物も真っ当に生きていて気持ちよく読めます。手紙だからそれぞれの人物が自分のことを書いていて、そこへ違う方向から光が差したときに真実が現れる。そういう瞬間が忘れがたい作品集でした。
【追記】2005/11/10
親本に当っても初出がわからなかったのですが、文学系作家によるミステリアンソロジー「ペン先の殺意」(光文社文庫)に「鍵」が収録されていて解説にあったので追記しました。
【収録書】
- 十二人の手紙(中央公論社)1978・文庫1980
【初出】「婦人公論」1977-1978
- *1: 私は読んだことないですけど……
この記事へのリンク:http://wonder-tea.com/tamatebako/archives/2005/03/04.html