« 書籍家計簿決算2005 | メイン | 首/山田風太郎 »
[06音楽] 天神山縁糸苧環(てんじんやまえにしのおだまき)/小松左京
2005-12-15
本格的に落語を聞いたことがないのですが、これは引き込まれました。小松左京の芸道もののなかで一番好きです。また、会話文の関西弁が他地方人にも読みやすく、美しいのでうっとり。ネイティヴならでは。
若手噺家の襲名披露の会が行われることになった。同時に師匠は因縁ある芸者と同名の人物が登場する噺を演じることに……
後半「立ち切れ」の緊迫感はこちらも息を詰めて読んでしまうほど。三味線は行間から聞こえくるようだし、客席の張りつめた空気も楽屋の緊張感も目に見えるようです。芸の神髄がこんなに短い文章で表現されていることが驚き。ところで小松左京はどたばたした状況の描写がうまいと思っているんですが、活動的な作家だからなんでしょうかね。
さりげなく登場する落語のストーリーが紹介してあるので不案内でも大丈夫ですが、寄席で本物を聞いてみたいところ。現世の因縁と噺の中の人物の重なり具合がもう絶妙。中にちらっと「葛の葉*1」の噺がでてきてニヤリ。狐が歌を書き付けて立ち去るシーンは他の短編「女狐」でも出てきたなあ。他作品でエピソードを「再利用」している「モジュール化」について分析しようと思ったんですが……またいずれそのうちに(できるかな)。
【収録書】
- 飢えなかった男(徳間書店:徳間文庫)1980
- 芸道綾錦夢譚:自薦短編小説集2(広済堂出版)1995
- 高砂幻戯(角川春樹事務所:ハルキ文庫)1999
【初出】「問題小説」1975年11月号
- *1: 狐晴明伝説で知られる
この記事へのリンク:http://wonder-tea.com/tamatebako/archives/2005/12/15.html